価値のある意識の高いグルメ。食べて、歩いて、感じて、地球を生かす「ヴィーガンフレンドリー」
ヴィーガニズムがトレンドになりつつある。何を食べるか考えることは、他の生きものとどうやって調和して生きていくか考えることに繋がる。単に自分の味覚を満足させるエゴイズムを捨て、人間と自然が共生できる最も身近で簡単な方法の一つとして、ヴィーガンを目指す人が増えているのだ。
そんな人々のために、ヴィーガンレストランの中でもとくに価値のある三つのレストランとその徒歩圏内の観光スポットをご紹介したい。
那由他のキッチン
「食事だけでなく回東(フェドン)水源池を散歩しながら体で味わう全てが合わさって当店のコース料理を構成していると考えています。」那由他(なゆた)のキッチンは、ヴィーガンシェフで環境運動家であり、シンガーソングライターのナカさんが運営するヴィーガンコース料理レストランだ。料理からも感じられるが、直接会ってみると、彼女はシェフというよりアーティストに近い。季節や味覚、栄養、ビジュアル、哲学をすべて調和させた料理は、味覚のみならず五感で「鑑賞する」に値する。
毎月テーマのあるコース料理が用意されるが、11月のコース料理のテーマは「深い」。「11月は晩秋の季節です。花がしおれ、実が熟し、季節の色も深まりますが、人間の思考も深まります。重ねて積み上げたこの丼ものは、深く多層的な人間の思考を表現したものです。」
「自然と人間が調和する姿」を表現している彼女の料理は、料理の「アウラ」としてヴィーガニズムの意味を、我々に思い起こさせる。わき役だった野菜たちが食卓の上で美しい主役に変身する姿は、まるで小さな革命のようで感動すら覚える。大切な人に深い気持ちを伝えたいときにおすすめのレストランだ。回洞水原池の遊歩道の散歩まで吟味してこそ、本当の意味でコースが完成するということを忘れないでほしい。
[那由他のキッチン]
釜山広域市 金井区 五倫大路262 黄土建物
Instagram@nayutas.kitchen/@nacca07
第一・第二の金曜日・土曜日:森とともに楽しむヴィーガンコース料理プログラムを運営
第三・第四の金曜日・土曜日:ヴィーガン料理クラス
プログラムの申請:linktr.ee/Nayuta_nacca
一つ一つの小さきものが集まって美しい那由他の料理になることを思い出してみよう。写真を撮るときもやはり、その料理のように小さきものを見つけ出し、主役にしてみよう。わき役はたくさん必要ない。あまりにも多くのものをフレームの中に入れようとすると、何もしっかり撮れなくなるかもしれない。自分の裸足、落葉、さざ波など、目を引く「一つ」を見つけるのが大事だ。できれば有名なフォトスポットは撮らないようにしよう。誰だって撮れる普通の観光写真になってしまうから。
※ 近くの徒歩旅行コース:回洞水原池黄土遊歩道
スペインレストラン&ギャラリー「プリンツェ」
「プリンツェ(Printze)は、学びと実践の共同体『コチ(蚕の意)』が運営しています。共同体の基本精神は、互いが繋がっているという意識にあります。ヴィーガニズムのコアな部分も、同じだと思います。」亀浦駅広場に位置するスペイン料理レストラン「プリンツェ(Printze)」は、韓国人の味覚に合わせてアレンジされたスペイン料理が広く知られている。海鮮が豊富に使われているが、ヴィーガンのためのキノコのガンバス、野菜の盛り合わせ焼き、野菜の出汁で作るひじきパスタ、豆腐とキノコのパスタ、柚子入りフジッリサラダなどのメニューが用意されている。これらのヴィーガン料理とよく合うナチュラルワインとして、ジョージアワインがおすすめだ。
釜山では珍しい上質なジョージアワインをプリンツェ(Printze)ではリーズナブルな価格で味わうことができる。世界最古のワインとして知られるジョージアワインは、ブドウの実、葉、枝をクヴェヴリという壺に入れて、地中に埋めて熟成させる伝統的な方法で製造される。韓国に輸入される量が少なく、入手は容易ではない。ジョージア・ヴィーガンワインは、酸化防止剤のような添加物がないため、あまり二日酔いせず、色や香り、味から感じられるフレッシュな爽やかさが言葉で言い表せないほど魅力がある。
プリンツェ(Printze)は、1階はレストラン、2階はギャラリー、コミュニティ空間として運営されている。ギャラリーを中心に、地元民との文化交流や若者たちの人文学を中心とした活動空間としても注目を集めている。多様な価値が混在するレストランだが、何よりも従業員の暖かいおもてなしとリピーターが印象的だ。レストランを、「人生と人に対する態度を身につける場所」と定義している彼らならではのピュアで真剣な態度が、料理と深くかかわり、美味しさをより一層引き立てているようだ。
[スペイン料理レストラン&ギャラリー「プリンツェ(Printze)」]
釜山広域市 北区 洛東大路1694ボンナギル2
火曜日~土曜日 11:00~22:00/定休日は日曜日、月曜日/ Break time 15:00~17:00
火曜日~木曜日はペット持ち込み可
linktr.ee/printze_spanish
プリンツェ(Printze)のある亀浦駅広場から亀浦地下鉄駅と繋がっている遊歩道を歩くと、クンピッノウル(黄金色の夕焼け)ブリッジが見え、華明(ファミョン)生態公園へ続く。反対側に渡ると三楽(サムラク)生態公園が出るが、これらの公園は、人工的すぎない自然な雰囲気が漂っている。
ヴィーガニズムと共同体が持つ共通の価値は、「お互いを生かす繋がり」にあるといえるだろう。公園を歩く途中、ふと木の下で足を止めて「私とつながっている存在」について考え、感謝の気持ちと驚異に浸ってみるのも良いかもしれない。良い食べ物でお腹を満たし、良い考えで心を満たすときほど、癒される時間が他にあるだろうか。
映画フィルムで撮ってみた。風景は感性というフィルターを経てときにはエメラルド色に、ときにはミント色に染まることがある。だって、人生は映画より映画のようなときがあるではないか。映画フィルムが持つ独特の色合いを使って、自分だけの感性をもって映画より映画のような日常を表現してみよう。
※ 近くの徒歩旅行コース:亀浦地下鉄駅の遊歩道から続く三楽江辺公園、華明生態公園、クンピッノウルブリッジ、亀浦市場
オブッタン
「似たり寄ったりに見えるかもしれませんが、豆だってそれぞれ異なる名前と特性を持っています。そのユニークさを区別し、生かすことが大事です。人も同じですよね。一人ひとり、豆のようにユニークで個性豊かな存在です。」ヴィーガンレストラン「オブッタン」のチャン・ウンスオーナーの笑顔は、丸くてふわふわしている。シグネチャーメニューの「ニョッキ」は、その笑顔が与える雰囲気がそのまま表現されている。
麺の代わりに、ジャガイモと韓国産小麦粉で作られた柔らかく丸っこい団子がパスタに使われる。ピスタチオがたっぷり入ったトロッとしたソースは、クリームのように口の中で柔らかく広がる。ランチメニューの定食は、腹持ちが良いが胃に負担にならず、なかなか接することのない高級感を漂わせると同時に、親しみやすく感じられる。
レストランの片側には穀物が陳列されている。パンコムギ、トゥンティギ豆、在来種のハトムギ、アジュカリバム豆など、親しみやすい固有語の名前がたくさん付けられているが、そこからも我が国の土地から生産された穀物への彼女の愛情を垣間見ることができる。このように十分に愛されて理解されている食材が融合して作られた料理が、調和の取れていない料理であるはずがない。
[オブタン]
釜山広域市 中区 東光ギル42 1階40階段の下の道、古心精舎の向かい側
Instagram@surisuri_obuthan
火曜日・水曜日 11:00-14:30 / 木曜日・金曜日・土曜日 11:00-14:00, 18:00-21:30
予約・詳細情報 linktr.ee/obuthan
オブッタンは中央洞40階段通りにある。旧都心ならではの長閑でレトロな雰囲気がノスタルジーを呼び起こす。オブッタンを中心に20分歩く範囲内に「百年魚書院」、「オープンスペース・ペ(船)」、「伏兵山(ポクピョンサン)小さな美術館」、「40階段文化館」、「中区文化院」など、こぢんまりしていて、インパクトのある文化施設が密かに、だが堂々と佇んでいる 。歩くのが好きな人には、草梁洞(チョリャンドン)、瀛州洞(ヨンジュドン)まで続く山腹道路を登り、愛感漂う人々の暮らしが垣間見ることをおすすめする。時々、おとぎ話に迷い込んだように出会う野良猫たちの後を追って道に迷いながらついていくのも、旅人に勇気と感動を与えてくれるかもしれない。
旧都心の古風な雰囲気は、モノクロ写真にぴったりだ。40階段の周りの造形物は面白い被写体になる。山腹道路の曲がりくねった景色をゆっくり鑑賞し、心を動かす人々の暮らしの面影を辿ってみよう。
※ 近くの徒歩旅行コース:40階段、山腹道路