釜山市民公園ができる前まで、釜山で一番有名な公園と言えばここだった。釜山市民の思い出の片隅にある公園、金剛公園と金剛植物園だ。
日本人商人が金井山のふもとの一部を個人の庭園として整備したことに始まるここは、光復後に公園に指定され、「金剛公園」と名付けられた。「金剛」という名前は、金井山が金剛山に匹敵するほど美しいという意味から「小金剛」と呼ばれていたことに由来する。
金剛公園は都心にあり、緑豊かな森林と奇岩怪石の調和が美しい公園である。最も人気の散策コースは、公園全体を一周する散策路だ。適度な上り坂と下り坂で構成されている散策路は、「登山は苦手だけど、森の中を歩きたい」人にうってつけのコース。緑豊かな松の森を歩きながら、爽やかな空気を思いっきり満喫できる。上り坂がきついと感じたら、あちこちにある岩に腰かけてひと休みしよう。日常の中で幸せなひと時を満喫できる散策路だ。
金剛公園の園内には、様々な文化施設もある。地域の伝統的な踊りである東莱野遊や東莱地神パプキ、東莱鶴踊り、東莱鼓舞、伽倻琴散調などの教育を行い、公演も観覧できる釜山民俗芸術館と、世界約100カ国の希少な海洋生物をはじめ、大型種・韓国の天然記念物・韓国特産種の海洋生物が見られる釜山海洋自然史博物館がある。
金剛公園ロープウェイも見逃せない。1966年に造られた赤と黄色のロープウェイは、今でも運行している。往復運賃9,000ウォン(大人)の金剛公園ロープウェイは搭乗時間6分程度で、ロープウェイを降りると金井山城の南門から始まる登山路まですぐだ。時間があれば、金井山城の東‧西‧南‧北門の城郭道を歩いてみるのもおすすめだ。
金剛植物園は、ゆとりの美学を体験できる素朴な植物園。藤の古木が並ぶ休憩スペース、石造りのベンチを覆うコケが、きれいに刈り整えられた植物の中に不思議と溶け込んでいる。石段を登り、刈り整えられた植物の群落を通り過ぎると、かつての面影が感じられる観覧温室が現れる。時の流れが止まったような雰囲気に包まれ、建物を覆うツタや小さくて美しい池を眺めながらゆっくりと休める場所だ。
新しいものばかり追求するのではなく、古いものの趣や価値に目を覚ました今の時代。金剛公園と金剛植物園は、そんな古いものの価値を教えてくれるはずだ。